Energy-efficiency

浄水処理工程におけるフルボ酸の把握
低濃度の溶存物質の分析に威力を発揮する蛍光分析法を利用し、これまでブラックボックスであった浄水処理工程におけるフルボ酸の様子が把握できるようになった。


世界の水道水
海外出張の際、小さな容器に採取した各国、各都市の飲料水を集めて蛍光強度を測定した結果を図-14.15に示す。横軸に蛍光強度を対数で表示し、強度の小さなものから大きなものまで全部表示した。そして、上から西ヨーロッパの主要都市をおおむね北から南へと並べた。この図から、緯度による違い、水源による違い、浄水処理工程による違い等の種々の事情が読み取れる。

地震が全くない土地で残留塩素の必要がないとのことである。地下水利用のフランクフルトでは、浅井戸の水は自動車の洗浄等に利用し、深井戸の水は飲料水やビール醸造用に利用するとのことである。さらに、ライン川の下流にあるデュッセルドルフでは、いわゆるバンクフィルトレーションで水を汲み上げ、オゾン処理、活性炭処理を行い、二酸化塩素を添加して供給している。

蛍光強度の違いは、活性炭もしくはオゾンの効果である。


浄水処理のブラックボックス 浄水処理工程において、被処理水中の大きな物質から考えると、例えば、浄水場の取水口で洪水時に流れ込むごみ、巨大な浮遊物、木材等はスクリーンで除き、次に砂利、砂、泥等を沈砂池で沈めている。比重が同じ粒子の沈殿は、物理的にはストークスの法則に従い、沈降速度は粒子の半径の2乗に比例して沈殿する。比重が小さければ、同じ粒経であっても遅れて沈降する。

砂利、砂、泥の順で池の底に堆積する。水は動いており、粘土質のコロイド物質やフミン物質(腐植物質、フミン質)のヒューミン等の濁りが残る。これらは水源の上流部の地層によって異なるが、0.45umのフィルタでろ過した河川水でも、レーザ光線を横から当てると、光路に細かい粒子がブラウン運動をしていることから認められる。


次に大きな分子として溶存しているのがフミン物質である。フミン物質は、動植物の腐植してできた物質や微生物の代謝物質等が複雑に作用してできま有機物であり、構造式は特定できない。フミン物質の区分は、酸、アルカリに不溶なヒューミン、アルカリに溶け酸に不溶なフミン酸、pHに関係なく水に溶解するフルボ酸に分けられる。これらは基本的に毒性のない物質で、環境水中に偏在する。

しかし、塩素処理工程を経るとトリハロメタン前駆物質となり、浄水処理では無視できない。河川水中の溶存有機物質の約半分がフミン物質で、その90%がフルボ酸といわれているが、分子量分布は持つが、構造は不明で、水処理においては完全なブラックボックスである。この研究を始めると出口が見えなくなる。次に分子式、化学構造が判明している有機物や無機物である。これらは多くの化学工業から生産される化学物質、農薬、医学、洗剤等であり、分離分析の方法が確立している。この分野は、研究するとすぐに結果が出て終了する。
浄水処理工程の評価 ブラックボックスにあるフルボ酸やフルボ酸様有機物は、特異的な蛍光スペクトルを示し、低濃度の分析が可能な蛍光強度の分析を行ったところ、浄水工程の様子がよくわかるようになった。

3つの蛍光強度は、相対蛍光強度であるが、横軸の数字に従って浄化が行われ、蛍光強度が順次低下していく。

ロンドン
河川水
①調整池
→②前オゾン
→③加圧浮上/ろ過
→④過酸化水素
→⑤オゾン
→⑥活性炭
→⑦緩速ろ過
→⑧塩素
→⑨脱塩素

クロラミン変換•消毒
トリノ
①河川水
→②前塩素(二酸化塩素)
→③前オゾン→凝集→塩素
→④スリラー循環型クラリファイヤー→凝集→塩素
⑤スリラー循環型
→⑥後塩素(二酸化塩素)
ロサンゼルス

①河川水
→②オゾン
→③凝集
→④ろ過
→⑤塩素

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