Mechanism

一般にモノ(製品・サービス)は市場の仕組みの中で価格というモノサシを用いて需要と供給のバランスが調整されています。たとえば「穀物」で考えてみましょう。穀物は人々の主食として一定の需要があります。需用量が変わらないときに、凶作で市場に供給される穀物の量が減ると、穀物は不足して価格が上昇します。一方、豊作で多くの穀物が市場に供給されると、市場では次第に穀物があまり、価格は定価していきます。

このように、価格の変化を通じて市場の需要と供給のバランスが調整されて、経済的には無駄のない効率的な状態になります。しかし、このような仕組みが成り立つのは、市場で価格が付けられるモノに限られます。環境のように価格が付いていないモノでは、穀物のケースと同じようなバランスの調整が行われないのです。

環境汚染のメカニズムをみるためには、工場の煙突から出る煙による大気汚染のケースを考えてみましょう。

ここに、ある商品をつくる工場があったとします。この工場は商品をつくる際に煙を出すので、工場周辺の大気汚染を引き起こしています。その結果、周辺の住民はその煙によって、喘息などの健康被害を受けています。

この工場が市場に供給する商品の量と価格は、需要曲線と工場の供給曲線との交点になります。本来、この工場は、商品をつくるときに発生する煙を出さないように対策をとる必要があります。こういった対策を行えばより多くのコストがかかることから、商品の価格にそのコストを上乗せして商品を値上げせざるをえません。対策を行った場合の供給量と価格は、需要曲線と大気汚染対策を考慮した供給曲線の交点になります。この2つの交点を比べると、対策をとった場合は、とらなかった場合と比較して商品の価格が高くなるだけではなく、市場での供給量も減少することになるのです。

つまり、大気汚染対策を行わないで工場が操業を続けると、たくさん商品を生産しなが大気を汚染し続けてしまいます。大気汚染対策をとらない工場は、より安い価格で商品を販売することができ、対策をとった工場の商品よりも安いので多く売れます。したがって、対策をとらない工場のほうが大きな利益をあげることになります。

このような現象を経済学では「外部不経済」や「市場の失敗」などと呼んでいます。先の工場による大気汚染や周辺住民の健康被害は、工場がつくっている商品が販売される市場には直接影響することなく起こっているもので、こういった状況を「外部不経済」といいます。

そしてこの外部不経済があることで市場の仕組みがうまく機能しない現象を「市場の失敗」と呼んでいます。

対策をとっていない工場にとっては大気汚染対策をとらないことに対するペナルティを受けないために、対策のインセンティブを感じず、そのまま汚染を放置してしまうといった状況が起こってしまいます。環境問題はまさにこのような状況から発生しているということができます。

「市場の失敗」が起こらないようにするために

では、「市場の失敗」が起こらないようにするにはどうすればよいのでしょうか。先の工場と大気汚染のケースで考えると、工場に金銭的負担をさせる税や課徴金という方法があげられます。

また、煙を出している工場に対策に必要な設備に対する補助金を出す方法もあります。これらの方法は、いずれも大気汚染対策とのトレードオフが生じることから、市場の仕組みに取り入れられることになります。

なお、このように市場を介していない影響をこれらの経済的手段等を使って市場の中に取り入れられることを「外部不経済の内部化」といいます。「外部不経済の内部化」によって、「市場の失敗」が起こらない仕組みを考えることができます。

ozone