post

ヒューストンより司令船オデュッセイへ。機体から月着陸船を分離せよ

「ヒューストンより司令船オデュッセイへ。機体から月着陸船を分離せよ」

「了解。電力量は問題なし。ーーーさよならアクエリアス。ありがとう」

ご記憶の方も多いでしょう。映画「アポロ13」のクライマックスです。私も個人的にとてもすきなシーンです。1970年、アポロ13号は月面踏査用に3個の燃料電池を載せて宇宙空間へ旅立ちました。しかし爆発事故で酸素ボンベが壊れ、地球を出たときにはすでに2個が使えなくなっていました。

この時点でアポロ13号のミッションは「月面探査」から「地球への帰還」に変わります。それは月着陸船用に搭載した「アクエリアス」を救命ボート代わりに使い、司令船オデュッセイを地球に連れ戻すという難事業でした。オデュッセイの酸素や燃料などは大気圏突入の直前まで使えません。燃料切れの危険と背中合わせの状況に置かれた宇宙飛行士たちはNASAと冷静に更新しつつ、残った1個の燃料電池をフル活用して大気圏に突入します。いまも語り継がれる「アポロ13の奇跡」はこうして生まれました。

宇宙開発の歴史の中で燃料電池は常に隠れた主役であり続けてきました。燃料電池の基本的な仕組みは、水の電気分解を逆にしたものです。細かな穴の空いた2本の電極にそれぞれ酸素水素を送ると、電気を発生しながら水が出てきます。燃料の水素を送ることによって発電することから、燃料電池の名がつきました。

火力発電の場合、カルノー理論によって熱変換効率が低下しますが、燃料電池の場合、燃料がそのまま電気エネルギーに変換されるので、70%以上の高エネルギー変換ができるのです。

ものを燃やすことなく、化学反応から直接エネルギーを取り出すその仕組みは宇宙空間で何より頼もしい存在なのです。そして近年、燃料電池は排気が少ない次世代型クリーンエネルギーとしても、大きく注目されています。宇宙船の貴重な命綱として活躍してきた燃料電池が、今、新たなライフラインになろうとしているのです。